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花束を持つ男

男は花束を持ったまま

どこにいったらいいのかわからなかった

男が

花束を持ったままいつまでも困っていると

雲が降りてきて

男をかくすのだった

 

だが

雲はけっして意地悪とはいえない

それは雲のつとめだから

 

男は

いまでもその花束をささげ持っている

いつまでも

そのまま

 

  わたしたちが見たものは永遠だった

  わたしたちが聞いたものは永遠だった

  永遠がうず巻く

  うず巻いてそれは炎となる

 

  男の肉体は

  どっと炎のなかへ倒れ込む

 

地獄の底に落ちていくもの

愛は

わたしたちにとってなんであるか

赤や 黄や オレンジ

の亡霊たちにとり囲まれて

わたしは自分がまず

なにを失わねばならないかを知る

 

目や 舌や

皮膚

わたしはそれを失うことによって

わたしたちの生がはじまるのを知る

生のなんであるかを知る