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感覚の闇とその外の魚

水のなかの魚

暮れていく大地 うす明かり

燃える黙示録

野のなかの閉ざされた一軒の家

 

こころはどこにあるのか?

川はどこを流れているか?

ふるえる空気を裂いてとつぜん空から降りてくる黒い手のようなものがある

舞い上がり舞い降りる飛ぶ鳥

赤い心臓のようなものをくわえて飛ぶ鳥

鳥たちがえがく文字はなにか?

 

夜は

鳥たちのものにちがいなかった

夜に君臨する鳥

人間のはらわたは夜のそこかしこにばらまかれ

わたしのからだは宙吊りにされている

はげしい渇き

 肉体の 飢えの 欲望の……

わたしはわたしを闇で養った

闇を飲んだ

苦痛と憎悪を養った

目まいのなかでわたしは闇そのものとなった

 

ドン・ロドリグよ

五右衛門よ

瞬間で 永遠をはかるのだ

苦痛で 慈悲の重さをはかるのだ

 

夜は上にも下にもあった

夜はわたしの内にも外にもあった

夜はごうごうとうなっていた

人の叫び声もあった

 

地平線を疾駆するものがある

エジプトの バビロニアの 黄河の インダス川の 奴隷市場の 王宮の

歓楽と 呪詛と 祈りと 怒号と けたたましい笑い

夜は人間の歴史でもあった

それはまさしく新しいひとつの感覚

それがわたしの夜の舌に

鼓膜に 鼻孔に 胃の腑に 背骨に

ずきんずきんひびく

 

水のなかの魚

たしかに夜の底 わたしの外にいる魚

をわたしは感じる

夜は感じる

燃える黙示録

…………

 

 キリストまず初めに”魚”といいたまいき