最後に
ぼく等はもう確保すべき何ものもない
ということを知ります
そして
そのディレンマのなかで
ぼく等の解放されるべきとき
がきたのを知ります
やがて夜がやってきて
この軒先をつつむとき
ぼく等は
めいめいの家に帰るため
舗道へ歩み出る
ぼく等は時計を見る
街のうえにはりめぐらされた
電線を見る
とおい地平線に煙を吐く黒い煙突を見る
それから
ぼく等はもう一度ふりかえり
まだ軒先に光っている露の玉
を見て
何かがそれを
ぼく等に暗示していることに気付き
ぼく等は
それが何であるか
こころの奥ふかく考えながら
帰っていきます