二人は
何ということはなしに運河へ出てしまった
一人はタバコを口にくわえた
すこし風が出た
街には灯がついて遠くの空では
もう星が瞬きはじめていた
いっぽう運河の向こうは
もう何も見えないほど暗かった
夕暮れのかすかな光のなかでは
運河の水がひき汐にのって
すこしずつ動いていた
川になるところに
コンクリートの水門が扉を開いていた
水門のそばに材木が
うずたかく積みあげられていた
川は
その向こうにいくつかの洲を見せて
広がっていた
川はそのまま海に入っていた
その出口のあたりに赤い浮標燈がじっとちいさく光っていた
海はもう見えなかった
背の高いほうが
ポケットからピーナツをとり出していった
「つまみなよ」
と
たそがれの
水は
急速に暮れていった