ぼくは
それ等の岩を見た
夜
まっ暗な部屋のなかで
鋭いかき殻につつまれた
それ等の岩を見た
おびただしい海藻や
木や ネッカチーフや 貝殻や
こわれた壜など流れついている
それ等の岩を見た
ぼく等が近づくと
大きな鳥が
ギャー
といって飛び立つことがある
それ等の岩を見た
それは
遠くから見ると
まるでなかのいいみみずくであったり
ごつい坊主頭であったりした
けれどもそれ等は
夜
星もない夜は
火を噴くのかと思われた
おそるべきシメールであり
誰もきづかなかった
船に乗っている友も気づかないようだった
「そりゃそうだがね
だって俺たち見えないものしかたがねぇや」
と
彼はいった
「ほんとだろう ぼくもそう思う」
といってやった
晴れた日には
ああまったく船がよく見える
それからは
すべてに倦いてしまった
恋にも
タバコにも 賭ごとにも
「まるで
おまえの人生って歯医者の回転椅子だな」
と誰かが
ぼくの耳もとでささやいた
ダリア
チューリップ 水仙 ひまわり
四季の花ばなは回転椅子のなかで
うつくしくも咲いては
また枯れていくのだった
(みちたりた 残酷な あったかい
そしてそれ等の世界)
「ほんとだろう ぼくもそう思う」
その日ごとの扉を
うち破って
ぼくはそれ等の岩を見た