夜のなかにひとつだけ明かりが見える。わたしは、そこに必ずあなたがいるものと信じる。そして、わたしは旅立ってゆくものだ。
どこへゆくのか。ひとの身であるわたしには知るすべもない。けれども、わたしにはわかる。わたしはあなたのもとよりほかにゆくすべのないことが。いま、遠くへだたってわたしは思う。わたしはあなたのもの、わたしの出発はすなわち回帰、あなたのもとへの回帰なのだと。
わたしは、無限にあなたのもとへ帰る。あなたはわたしの国、わたしの帰るべき土地。どこまでいっても、わたしの血管はあなたによって結ばれている。わたしの血液は、あなたによって運ばれる。あなたの血管は、わたしの夜の国をこまかな網の目のように満たしている。もし、わたしがわたしの路上で立ち迷っているとすれば、それはあなたのみこころゆえなのだ。
夜のなかにひとつだけ明かりが見える。それは、わたしのこころの窓に映った明かりだ。雨が降っている。わたしはブラインドをおろして目を閉じる。そして車中のひととなる。
夜のなかで、わたしのために祈るひとよ。つめたい雨のなかで、わたしたちのために祈るひとよ。その声は世界に満ちている。