その日
ぼくはぼくの小犬の死骸を抱いて
豌豆畑に立っていた
するとおじさんが「おーい」と叫んだ
ぼくは
素早く畑のうねに隠れた
おじさんの顔は大きな麦藁帽子でよく見えなかったが
ぼくの胸はどきどきし
汗が額を伝って流れ落ちた
お日さまは
ヘムロクの梢から
僅かに傾いた
畑に倒れたシャベルの土は
しだいに白く乾いていった
おじさんは
腰に沢山のパイプをぶら下げていた
豌豆の葉と葉の間で
お日さまは
青ざめて小さく見えた
お日さまは
それでもどんどん駆けて行く
その後から四輪馬車や
魚や
大工や
仕立屋や
平野や
それから森や家
がゆっくり空を過ぎて行った
おじさんの吹かすタバコの煙が
その後を追って
細長くながれていた
朽ちた柵の隙間で
鋭い風が
急に煙を吹きちぎっていた
詩集『大きなドーム』(1957年)より