その頃
ぼくは痩せていて苦しかった
ぼくと犬は
毎日どじょうを見に出かけた
円い明るい陽射しの中に
湿って黒いあぜの土が盛り上がっていた
ぼくらが行くと
水は次からつぎへ濁ってしまった
どじょうが底の土へもぐるのだ
山の頂きの松の樹の下や
岩の凹みには
まだ消えないで雪があった
山脈の向こうには夏が近づいていた
それが顔だけ見せていて
それは汗ばんでギラギラ光っており
ぼくは
黙って蒲団にもぐり込み
熱を出して一人で震えていた
詩集『大きなドーム』(1957年)より