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一九五五年六月一三日

月が丘に昇ると

くはどうにもならない

頭を抱えて座り込む

 

彼女は

ぼくがお話してやると

とても喜ぶのでしたが

たけにぐさの茂みのなかで

死んで小さくなってしまいました

どうしてでしょう

みんな眠ってしまった後

彼女とぼくだけが

起きていなきゃならないなんて

 

月が昇ると窓をしめて

ぼくの暗い頭蓋骨がガラスにうつり

窓の外では

ぼくと彼女がお話しています

 

                たけにぐさ:ケシ科の多年草。別名チャンパギク。

 

 詩集『大きなドーム』(1957年)より