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半分瞼をあげてる月

すべてが

あなたに

属している夜

ぼくは帰らねばならない

 

ぼくのこころを

掻きむしっているあの

フルートの黒い音さえ

 

テーブルの上で震えている

ぼくの時間さえ

 

それは

みんなあなたのものです

 

すべてが

あなたに

属している夜

半分瞼をあげてる月

 

多分

壁の後を吹いているのは

風ばかりです

 

詩集『水の装い』(1954年)より