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黄昏のバラッド Ⅱ

(ペンネーム:西 卓)

行き交う尖ったシルウェットの

飜える黄昏は

いちまいの白いぺエパア

危うくぼくは

間違えそうになったが

水溜りではなく

それは

雨あがりの街路に平たくなった

月だった

 

屋根屋根は落ち窪み

次第に傾く

風が吹きひどく泥濘み

ぼくはよろめく

 

落下する黒いピアノ

 

露路を曲がって

ぼくは帰る

古代シナの仙人は呟くだろう

「月は風と刺し違えたのだ。」

とね

 

詩集『水の装い』(1954年、三角旗社)より