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黄昏のバラッド Ⅰ

(ペンネーム:西卓)

誰も居ない空

しばらくは

魚たちの棲家となって

人は

神を信じようとしない

 

暗い背を向けてあなたは帰る

草むらに星は昇る

 

古代の恋人たちは

少くとも知っていたのだ

歩きながら

苦い悔恨が滴る

 

蜘蛛の巣のような広場に立って

マッチ擦ると

もう夜に閉ざされている

ぼくのあたり

 

詩集『水の装い』(1954年、三角旗社)より